監査のお仕 事ってどんなもの? 化学メーカー→監査法人のキャリア選択(2)
いたやんさん (30歳)
新卒で大手化学メーカーに入社。その後公認会計士の試験に合格され、現在は監査法人に勤務されています。NPO法人アスデッサンの運営にも正会員として関わっていただいています。
監査法人に移った経緯
──その後、今の会社に転職することになるわけですね。
経理の仕事をしていたわけですが、自分がいわゆる「財務会計」(※)的なことをしていなくて、それを補いたいと思いました。それで、仕事が落ち着いて勉強する時間をつくりやすくなったこともあり、公認会計士の勉強を始めることにしました。
※財務会計:対外的に発表することを目的に、一定のルールに沿って行われる会計。いわゆる「企業の決算発表」で出ている決算書はこっち。
一方で、「管理会計」という社内の業績管理などを目的として行われる会計もある。こちらは社内用なので、ルールも会社によって異なる。
勉強しているうちに、これを仕事にしたら楽しいかなと思うようになりました。
また、自分の性質上、今の仕事を続けても自分の枠を飛び出ないだろうなという気持ちが、大きくなっていました。それでちょっと違うフィールドに行ってみようかなと考えはじめました。
自分には他の人と比べて、ものごとへの愛着がないんですね。例えば工場に行くと、その製品だけずっとやり続けてる人がいて、プライドを持って熱心に取り組んでいるんですけど、その人たちと比べると、自分は特定のものに集中するのができない性分だなと感じていました。
結局それってパフォーマンスに跳ね返ってくると思うんです。やっぱり偉くなっている人、成果を出している人は熱意が違う。雰囲気が違う。
なので自分は、もう少し客観的に中立の立場で、仕事ができる所が合っているかなと思い、今の仕事を選ぶことにしました。
──監査法人に移ってからの仕事は事前のイメージ通りのものでしたか?
監査法人に入る人の多くは、公認会計士の試験勉強をする中で、監査の仕事についても勉強するので、イメージからあまり外れることがないんですね。そういう意味ではちょっとずるいんですが。それはありつつも、イメージしていたところと近いかなと思っています。
今の仕事は「監査」という、決算書がルールに沿って適切に作られているか調べる仕事です。この「監査」がないと、会社の活動に必要なお金が提供されなくなってしまうので、社会的に意義のある仕事です。ルール自体が複雑であったり、解釈に高度な判断が求められる場面があるので、自分の知識を活かしながら、そういった課題を解決していけるのも魅力の一つです。
監査法人では、前の会社での経験を踏まえて、より良くできるところもあると思っているので、そういうところを変えていけるよう取り組むのも楽しいですね。
進路選択に正解はない
──中高生へのアドバイスとして、どういうところに着目すれば、仕事に就いた後のギャップを埋められるか等、着眼点みたいなものはありますか?
まずは身近なところから自分を振り返る、例えば「数学が好き」「部活で入賞して嬉しかった」「試験でいい点を取るのが楽しい」「ゲームなら一日中できる」など、自分のプラスの感情や興味がどこから来ているか、見つけるのが大事かなと思います。自分のように体験から引っ張て来てもいいと思います。
そういうものが見つかったら、共通点を探していったり、さらに深堀をしていったらよいかなと。一口に「数学が好き」と言っても、数学の定理そのものに美しさを感じるのか、勉強を積み重ねて問題を解いて成果を出すのが好きなのか、証明の論理を積み重ねることが好きなのか、色々あると思います。
深堀をしていく過程で、自分のことが明らかになっていくと思うので、それを踏まえて仕事を選んでいけばよいと思います。
──もし、大学卒業の時の就職先を選ぶタイミングに戻ったとき、今の監査法人のような働き方を目指すのか、それともやっぱりメーカーに入るのか。または、もっと違う道を選ぶのか。今振り返ってどう考えられますか?
全く同じ道を選ぶと思います。
今の自分の視点から見ると、最初の会社を経て監査法人に入るというのが、結果的に非常に良いステップだったと感じていて、そこは変えなくていいかなと思っています。
──進路選択って「正解がある」と考えると悩んでしまいますけど、みんな社会人になってからも進路に悩んでいて、結局正解はないというか、経験を積むことでわかってくることってありますよね。
そうですね。とりあえず飛び込んでみれば、自分や世の中のことがよりわかってくる、という感じはありますね。色々考えて答えが出なければ、とりあえずやってみるというのは非常に大事だと思います。
──最後に、アスデッサンに関わることになった動機とか、子供たちにどんなことを伝えたいか、というトピックで締めてもらいたいと思います。
最初の会社で後輩の育成もしていたので、人が育っていくのはいいなーと思っていたのが、そもそも教育に興味を持ったきっかけです。
教育と言っても色々あるのですが、社会に出てから本当に色々な仕事があることを知って、こういうことを中高生のうちから知っておくと後の選択肢がぐっと広まるのかなと思い、色々な仕事の内容を伝えることができるNPOに入ろうと思いました。
自分自身の経験でいうと、資格の勉強をする中で法律も学んだのですが、法律や弁護士の仕事内容が面白いなというのは、社会人になってからでも大きな発見でした。もともと、難しそうという勝手なイメージで法律は避けていたのですが。これなら経済学部じゃなくて、法学部に入ってもよかったなと。
なぜそういうことになるかというと、やっぱりどういう仕事があるか知らなかったからだと思うんです。弁護士でいえば、法廷で話すのだけが仕事では全くなくて、ビジネスの現場で働いている人もいたり、本当に色々な活躍の場面があると思います。自分の選択には満足していますが、そういったことを知らなかったために、結果的に選択肢を狭めることになっていたなとも思います。
色々な選択肢を中高生の皆さんに伝えられるところがいいなと思ったのが、アスデッサンに入った動機です。
中高生にお伝えしたいことというのは、繰り返しになりますが、自分が何を大事にしているのかということを、きちんと把握していただけたら、ということです。そして、それが今の生活の延長線上で見つからないなら、いろんなことに手を伸ばしてみたらいいんじゃないかなと思います。やってみないとわからないこともあると思うので。
やってみたら意外と面白かったということもあるので、あんまり興味がなさそうなことにも、手を伸ばしてみたらいいんじゃないかなってのが一つですかね。
2つ目は、自分の興味のあるところに、どういう人が関わっているか、世の中にどんな職業があるか、知っておいてほしいということです。
例えば、レストランといっても、料理人なのか、ウェイターなのか、レストランの空間や建物を作る人なのか、というように、連想ゲームみたいな形で調べたり見たりしていくと、いろんなことが知れると思います。興味のおもむくままに外のことを知っていったらいいんじゃないかなと思います。
──中高生にとっては周りには親とか先生しかいないというのが、まさしく課題だと思います。アスデッサンではいろんな社会人の人とつながることができるので、もしこれを読んでいる中高生の方がいて興味があれば、ご連絡いただければと思います。本日はありがとうございました。
はい、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。もっと化学メーカー、経理、監査法人の仕事について詳しいお話が聞きたいという中高生の方がいましたら、ぜひご連絡ください。(ご連絡はこちらから→https://www.asdessin.org/contact)
【運営団体 NPO法人アスデッサンについて】
一人ひとりが自分らしい未来を描ける社会を目指し、2011年より活動する教育系NPO法人です。
多様な大人との関わりを通じて、全ての中高生の可能性を拓くことをミッションに掲げ、中学校・高校への社会人講師派遣による出張授業や、多様な大人の生き方に出会えるWebサービスの運営など、キャリア教育支援活動に取り組んでいます。
公式HP: https://www.asdessin.org
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