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機会は自らつくるもの ~海外でプレーするプロサッカー選手の生き方~

麻生 弘隆さん (33歳)

札幌市出身。国内でプレー後、ソロモン諸島やリトアニアリーグなど海外のチームでプレーもされてきました。
今でこそ多くの日本人選手が海外で活躍していますが、麻生さんはGK(ゴールキーパー)をされています。GKとして海外で活躍している日本人は10人もいないと言われています。
現在は選手の傍ら、スカウティングや外国人選手のチーム斡旋の活動もされています。


── 早速ですが、麻生さんのこれまでどんなキャリアについて教えて下さい。学生時代からさかのぼって、当時、どのように進路を選んだのか、また、そこから現在のキャリアに至るまで、簡単にお聞かせいただけたらと思います。

サッカーをはじめたきっかけは、小さいころアレルギー性紫斑病っていう難病にかかったことです。入院生活も長く、リハビリをしないといけない状態でした。大人であれば、また歩けるようになりたい等、目標に向かって頑張れると思います、当時は子供だったので、リハビリを頑張れませんでした。そんな時、リハビリの一環でサッカーを始めました。退屈なリハビリと違い、サッカーは楽しく長く続けることが出来ました。

中高生でサッカーをしていく中でプロになるという意識が芽生え始めました。当時は、地域の選抜選手に選ばれる訳でもなく、試合に出られないこともあったので、決して上手い選手だったとは言えないと思います。でも、自分はプロのサッカー選手になれる、という確信は持っていました。

── サッカー選手になるという想いは、プロになる道が具体的に見える前から持っていたのですね。学生の時期って、周りの人が就職とか進学する中で、自分はサッカー選手の道を選ぶって結構大変なことだと思うんですよね。例えば、東京のように周りにクラブチームが多くあり、同じような進路を選ぶ人がいたならともかく、麻生さんの場合はそんな環境ではなかったと思います。自分で進路を決めて、踏み切れたのは、どんな理由があるんですか。

高校時代は、どうすればプロになれるか、ということを考えていました。プロになる機会には全て挑戦しました。しかし、その時点では目立った実績を上げられていなかったこともあり、なかなかうまくいきませんでした。

周りが進学や就職を決めていく中だったので、いろいろ思うところはありました。また、プロのスポーツ選手は収入が安定しないことも分かっていましたので、Jリーグではなく企業チームでも良いと考えました。企業に就職しながら、サッカーを続けるので収入面でも安定すると思いました。

しかし、自動車会社や電力会社など、3社の選考を受けましたが、全て落ちてしまいました。そんな中、たまたま、これからサッカーに力を入れていく大学があることを知り、連絡を取ってみました。既に募集は終わっていましたが、たまたまGKのポジションが空いていて、そこからはとんとん拍子で入学が決まりました。常に行動していたので、当時はあまり不安はありませんでした。

── そこが凄いですよね。もうプロになるのは決めていて、考えられる方法を全てやってみる。常にアンテナを張っているので、Jリーグが駄目でも、企業に就職してサッカーを続けることを考えたり、最終的には、一旦は大学でプレーをすることに決めたりと。
だれにでもできることではないと思います。その行動力の源泉はどこから来ていたんでしょう?性格なのか環境なのか。今の中高生も、周りに相談できる大人はいないし、ましてや同じようなキャリアを先に歩んでいる人はいないので、その環境を変えてあげたいと思っているのですが。

私の場合は、周りに相談できる人はいなかったので、全部自分で決めました。それに、正直まわりに相談するのは恥ずかしい、という気持ちもあったと思います。学生時代のコーチに「プロになりたい」と相談しても、「お前、何言っているんだ。選抜チームにも入っていないのに、それは難しいんじゃないか。」と言われました。

でも、自分は身長が186cmあったので、それが武器になるという確信はありました。当時としては、180cmを超える選手はかなり少なかったので。すんなり決まらなくても、100個受けたら1個くらい受かるだろうという気持ちでした。

── すごく励みになる話ですね。われわれがメディアを通じて知る情報ってほんとにトップクラスのプロばかりで、選抜チームから始まりストレートに進んでいる話しか知らないので。でも、そういう人ばかりではないし、麻生さんみたいに、選抜に入ってなかったり、自分でいろんなところに応募してプロになるというのは普段なかなか聞けない話なので、これを読んでくれた中高生の方も、そんな形でスポーツ選手になるやり方もあるんだと知ってくれたらと思います。
その後、海外に拠点を移され、さらに海外もずっと同じところでなく、色々な地域でプレーをされている。日本ではなく海外と判断されたことには、どんな意図や思いがあったんでしょうか。

学生時代、ブラジルに留学した経験が大きいです。海外での生活が新鮮で楽しかったので、いつかまた海外でプレーしたいという想いがありました。ただ、帰国後は目立った実績も残せていなかったので、なかなか機会がありませんでした。

そんな中、知り合いが「ソロモン諸島でサッカーをすることになったけど、興味あったらオーナーに話するよ?」と言われました。急な話でしたが、これを逃したらもうチャンスはないと思い、挑戦してみることにしました。

その後、ヨーロッパでプレーをすることになったのですが、それも知り合いの紹介でした。その後は、自分で情報を発信したら機会は作れると思い、SNSでの発信を始めました。それがきっかけで、ニュージーランドのチームに声を掛けて貰いました。

── 意外と転機は人との縁であったりするのですね。次は、麻生選手は、サッカー選手の後の、セカンドキャリアも描いているそうで、その辺りの話も興味があるのですが。

今期はメキシコでプレーをしています。しかし、怪我もあり、だんだんサッカーを純粋に楽しめなくなってきました。加えて、サッカー選手をいつまでも出来るわけではないので、セカンドキャリアを歩むタイミングでもあると思っています。新しい環境で仕事をするので、次のキャリアに進むなら、タイムリミットがあると思っていて。35歳までに次のキャリアを見つけようと思ってます。

── そうなんですね、サッカーを好きじゃなくなったというのが衝撃的でした。スポーツ選手って自分が打ち込んでいるスポーツが大好きでずっと続けたいのかなって印象があったのですが。でも、言われてみたら、若い頃の価値観が十年・二十年経っても変わらないわけないですよね。私も普通に会社員なんですけど転職もしていて、それは学生のときの価値観とは変わったから決めたことであって、そこは、普通の会社員もスポーツ選手も一緒だなって、改めて思いました。

若い頃は練習が好きだったんですよ。練習して上手くなることに義務感も感じてましたが、上手くなることが楽しかったんです。でも、この歳になると、若い時と比べて、練習に打ち込んだとしても、格段に上達するということはなくなってきます。なので、練習に楽しさを見いだせなくなってしまった。

── 麻生さんって凄い自分を冷静に分析されてますよね。35歳までにその次のキャリアを考えるとか、自分のスポーツに対する心境の変化も上手く言語化出来ている気がします。

若い時ってサッカーしか面白くなかった。でも今は、他にも興味が出てきた。今は、集客活動も興味がありますし、サッカー関係なく、日本のサブカルを発信することも好きですね。

── スポーツ選手のそんな話聞いたことなかったのでびっくりしました。でも、さっきも言いましたけど、それって人として当たり前ですよね。普通の社会人でも、一番初めの業界や職種に興味を持って始めても、何年かしたら、全然違う業界や職種に転職する人もいるので、スポーツ選手だから特別って考えることもないのかなって思いました。

充実感を感じられるかどうか、ってことが大切だと思います。そこは、サッカー選手とかサッカー業界に関らず取り組んで行きたいと考えてます。

── ありがとうございます。最後に、中高生に向けてメッセージをお願い出来ますか。

学生時代はムダなことも大事といいますけど、それは大人になったときに、人に胸を張って言えることか、考えてみてほしい。そうでないなら、それはよくないムダであって、誰も得をしないことかもしれない。たとえばいじめはその最たる例だと思います。

そうじゃなくて、自分をより良くするための時間に使えば、もっと自分が輝ける。将来、自分が胸を張って言えることに時間を使ってほしい。

中高生の中には自分のやりたいことが見つかれない人も多いと思いますが、先ずは、好きなことを考えることが良いと思います。ゲームをするでも、好きで、長い間できるのであればそれは一種の才能だと思います。

ただ、大人になって、ゲームをすることに、充実感・やりがいを感じられるか?という所まで考えて欲しい。例えば、自分はそこまで好きではないけど周りの人が凄いと褒めてくれるとか。周りが評価してくれると充実感を感じるので、自分は何で評価されているかも考えて欲しい。

あとは、自分の武器は何かも分析して欲しい。本人はそこまで大したことではない思っていても、実はそれが武器になる、という領域もきっとあると思います。

今回は、普段は聞けないスポーツ選手のリアルなお話をお聞きできました。
キャリアデザインにおいては
Will(自分がやりたいこと)
Need(社会に求められること)
Can(得意なこと)
の領域が重なる分野が理想のキャリアと言われているのですが、まさに、麻生さんはご自身の経験から、これと同じような考えに至っていて、すごいなと思います。

今回のインタビューは、いかがでしたでしょうか。もっと詳しいお話が聞きたいという中高生の方がいましたら、ぜひご連絡ください。(ご連絡はこちらから→https://www.asdessin.org/contact) 

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