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学生時代からの変わらぬ志。「若者が広く政治に参加する社会」に向けた10年越しの闘い。

西野 偉彦さん (30歳) 公益財団法人松下政経塾

都立青山高校、明治学院大学法学部卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。2010年4月、松下政経塾に入塾。専門は18歳選挙権、主権者教育。神奈川県立湘南台高校シチズンシップ教育アドバイザー等を経て、現職。その他、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、NPO法人Rights副代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長。2016年5月、神奈川県教育委員会「小・中学校における政治的教養を育む教育」検討会議座長に就任。 http://takehikonishino.net/ 


中高ともに取り組んだ生徒会長。 キャリアにつながる原体験。

中高時代に夢中になったのは、バトミントン部、文化祭の劇、生徒会長を務めた生徒会活動でしたが、その中では特に生徒会活動が印象に残っています。

中学での生徒会活動は仲間にも恵まれて充実していたので、「高校では、もう生徒会長はやらない」と思っていたのですが、高校に入学して生徒総会に参加した時、ほとんどの生徒が生徒会長の演説を聞いていない様子を見て、これは何とかしなければいけないと思ったんです。

私の高校では、歴代の生徒会長が文化会系から輩出されることが多く、私のように体育会系の部活をする生徒の意見を十分に汲み取ることができていないのではという思いもあり、再び生徒会長に立候補することを決めました。

そして、「一人一人の意思が学校をつくる」という信念の下で、生徒が「当事者としての意識」を持てるように、生徒会組織を改革したり、校則を改正していったんです。今思えば、これが現在の取り組みにもつながる原体験でした

どん底からの再出発。時代に必要とされた若者のチカラ。

私の大学生活は、ある意味で失意のどん底から始まりました。第一志望の大学に何度も落ちて、途方に暮れていたからです。しかし、大学2年生の時、ある転機が訪れます。

指導教授の勧めで、松下政経塾(※1)の主催する合宿イベントに参加したのです。そこで出会った全国の学生たちに刺激を受けたことがきっかけで、松下政経塾に進むことを初めて意識しました。とは言え、その教授からは、大学新卒で松下政経塾から内定を得ることがいかに難しいかを告げられると同時に、入塾できる可能性は「社会人に見劣りしないだけの経験を学生生活で積むこと」と「時代が若者のチカラを必要とした時」じゃないかと言われたんです。

特に後者はよく意味が分かりませんでしたが、その半年後、大学から届いた一本のメールが、私の道を切り開くことになります。

メールの内容は、港区長選挙の公開討論会(有権者を前に区長候補者が討論する催し)が都内の大学で初めて自分の大学で実施されることになり、その企画運営を行う学生代表を務めてみないかというものでした。実行委員長として、大学の仲間や後輩、社会人の方々と一緒に、福祉や災害対策などの港区の現状を学生が研究発表する場を盛り込んだ新しいタイプの公開討論会に挑戦し、成功を収めました。

これを機に、自分の志(テーマ)を「若者の政治参加」と定めて、その後も様々な活動を続けた結果、運と縁で、本当に松下政経塾に入塾することになりました。「運と縁」というのは、入塾選考の直前、2009年衆議院総選挙を前に、私の活動を取材して下さった記者から掛けられたこの言葉にハッとしたからです。「長く記者をしていますが、選挙前に、これほど若者が注目されることはなかった。西野さん、きっと若者のチカラが時代に必要とされているんですよ。」

それは、まさに2年前に指導教授に掛けられた言葉そのものだったのです!初めはどんな逆境に立っていたとしても、志を持って頑張れば、「運と縁」に恵まれて、道は必ず拓く。そんなことを心から学んだ、素晴らしい大学生活でした。

若者の政治参加を促すための3つのキャリア

現在は松下政経塾政経研究所に勤める傍ら、慶応大学大学院で専門的な研究を行い、さらに、15年間にわたり18歳選挙権の実現を目指して活動してきたNPO法人Rightsの副代表理事を務めています。

この3つ(仕事・研究・活動)は、若者の政治参加を促進することを目的とした「主権者教育」というテーマに取り組んでいることが共通しています。「主権者教育」とは、18歳選挙権に伴い、若者が政治に参加する上で必要な知識・意欲・能力などを育成するための教育です。

松下政経塾では一般の方向けのイベントの企画・運営を通じて政治に関心を持っていただく仕事をして、大学院では学校現場にどのように主権者教育を導入していくかについて研究し、NPOでは海外の主権者教育事例の調査や若者向けのキャンペーン等の活動を行っています。

大学時代に出会ったテーマを持ち続けて、社会人になった今でも、仕事・研究・活動を展開できていることを本当にありがたく思っています。

感じる追い風。若者たちの声が活動の原動力。

大学時代から「若者の政治参加」というテーマに取り組んできましたが、最近になってやっと18歳選挙権の実現を受けて、このテーマの意義や重要性が社会的に認められてきたことを嬉しく思っています。

これまでは、例えば、学校現場で実践に取り組もうとしても、政治的中立性(学校では特定の政党を支持またはこれに反対する教育や政治活動をしてはいけないということ)を理由に敬遠されることが多かったので、仕事でも研究でも活動でも、追い風を感じていることは大変ありがたいですね。

何よりも、私の企画したイベントに参加したり、講演を聞いた10~20代の皆さんから、「おもしろかった」「政治について考える必要を感じた」等の前向きな声を聞くことが出来た時には、大変な道のりですが、あきらめずに志を持って頑張ってきてよかったと思います。

テーマの特性。 理屈を超えた共感を呼ぶ難しさ。

昨今の追い風を受けてもなお、主権者教育への理解は十分ではないという現状があります。

その理由の一つには、政治に参加することの重要性を理屈で説明することはできても、多くの人に「理屈を超えて共感してもらう」ということがなかなか難しい分野ということもあるのかなと思います。

いずれにせよ、まだまだこれからです。大変だからこそ、やりがいもあるのですが(笑)

皆が熟議する社会を目指して。遠回りしてでも必要なこと。

自己紹介で「松下政経塾出身です」と言うと、「政治家になるんですか?」とよく聞かれます。

たしかに、政治家を目指していた時期もありましたが、少なくとも今は自分から手を挙げることはしないつもりです。このテーマを追っていく中で考え方が変わり、周りから自分が必要だと推していただけるような人間になるまで精進を続けたいと思うようになりました。

そんな私が成しとげたいことは、「熟議の民主主義を日本に根付かせる」ということです。熟議の民主主義とは、雰囲気や勢いで政治の方向性を決めるのではなく、遠回りをしてでも、意見の異なる人との議論を敬遠しない社会のことです。

例えば、日本は右肩上がりの経済成長の時代を終え、厳しい財政状況の中で、限られた資源をどのように分配するか、あるいは消費税などの負担をどうやって多くの人に納得するかたちで支え合うかを考え、議論し、皆で合意を形成して社会をつくることが必要になっています。

私は、政治と教育の分野で頑張っていくことで、そうした社会づくりを実現したいと考えています。

 

※1パナソニック創業者の故松下幸之助氏が1979年に設立したリーダー養成機関。政治家や経営者など各界に人材を輩出している http://www.mskj.or.jp/

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